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月のあるところを教えてやろうとして、指で月を指し示すと、愚かな者はただ指だけを見て、肝心の月には目もくれません。そこで、教える人は言います。「私の指を見ていてはいけない、指は月のあるところを示しているのだから。指の示す方向をたどって空の月をご覧なさい」
言葉とその本当の意味とは、ちょうどこれと同じ関係になります。聖人達はいろいろな言葉を使って、迷っている大衆のために心理を解き示してくれているのです。ところが大衆はその心理について見極めようとはせず、ただいたずらに聖人達の洗練された言葉の端々にとらわれて、しかも十分に理解したつもりになってしまっている場合が少なくありません。しかし言葉はあくまで言葉であって、本当の心理自体ではありません。しかしそれを混同してしまうのが世の中の一般大衆の悪い癖ともいえましょう。指の示す方向をたどって月を見るようにしなければ、本当の意味は理解できるはずもないのです。 |
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